「変える?買える/卒展をかえる」
東北芸術工科大学は、足球彩票の感染拡大が憂慮される中においても、感染防止対策を徹底しながら、2020年度の卒展(卒業/修了研究?制作展)を開催することを決定いたしました。
現時点では、観客の皆さまをお招きできるかどうかは不明です。しかし、たとえ無観客であっても自身の取り組みを発表できるレベルにまで仕上げることは、大切な学びの到達点だと考えます。
よりによって、こんなにも特異な年に研究?制作に取り組むこととなった2020年度の卒業?修了生ですが、例年の学生よりも半年ほど短い時間の中で、世界を襲った未曾有の災害と向き合いながら、なんとか卒業にたどり着くことができました。難しい状況の中で学生をご支援いただいた保護者やご家族、地域や自治体、企業のみなさまに厚く御礼を申し上げます。
さて、これまでのあたりまえな日常は変わり、新しい生活様式と呼ばれています。学生たちの学び方、教員たちの教え方、友人や恋人との関わり方に至るまで、身の回りの多くが変化しました。
大学のあり方も同様です。ますます変容する時代に準じるために、今年から東北芸術工科大学の卒展を「かえる」実験を2つ行うことにしました。
1つ目は「変える」です。
ウイルス問題の少し前から、世の中のバーチャルなコンテンツはリアルにポップアップされ、リアルな出来事はバーチャルの中に演出され始めていました。今回の出来事で、私たちはリアルとバーチャルの体験差や、直接接触と間接接触の温度差を経験する機会に恵まれ、より深く理解することができました。例年何万人ものご来場をいただいている本学の卒展ですが、今年は学生の作品や研究成果を展覧会場のみならずオンライン上にも充実させて、遠方からもご覧いただけるようにします。学科コースによっては展覧会会場からの配信も行います。
2つ目は「買える」です。
作品制作を行う学生にとって、作品の売買とは制作と社会を作品でつなぐ大切な接触点です。本学では、作品の売買までの過程を教育活動の一つと捉え、促進していこうと考えています。まずは今回の卒展を機に、一部の作品を購入することのできるオンラインストアを開設します。
まだまだ始まったばかりの実験ですが、学生が制作した作品をどなたでも気軽に鑑賞し、購入できる仕組みをつくりました。
※卒展?作品の購入は終了しました。
おわりに
東北芸術工科大学の学生たちは、常にこの地から東京や世界の様子を客観的に見つめています。アートとデザインを学ぶことで社会への理解を深め、アートとデザインの社会実装に挑むことで、新しい価値観に出会い、成長しています。
足球彩票によって人々の価値観が変化しようとしている今だからこそ、学生達の取り組みから教えられることが多いはずだと考えています。今年の卒展はきっと見ものでしょう。
手前味噌ですが、私自身が一番楽しみにしています。
東北芸術工科大学 学長 中山ダイスケ
2020年12月11日