design:立花文穂
美術館大学構想室企画展
舟越桂|自分の顔に語る 他人の顔に聴く
東北芸術工科大学では、「制作・研究の現場を、公開・交流の現場に」をキーワードに、キャンパス全体を地域ミュージアムに位置づけ、展覧会やアーティスト・イン・レジテンス、ワークショップなどの美術館的公開事業を企画・開催していくプロジェクト『美術館大学構想』に取り組んでいます。なかでも、国際的に活躍するアーティストを招き、学内のギャラリーで開催している秋の企画展には、展覧会の実施・運営に多くの学生の参加を促しています。優れた芸術家との交流を通して、実践的に学ぶ機会を多く設定することで、教育機関が主催する展覧会としての独自性を明確に打ち出しています。
2007年度は、招聘作家として世界的に活躍する彫刻家舟越桂氏をお迎えし、本学のギャラリーで『舟越桂|自分の顔に語る 他人の顔に聴く』展を開催いたします。やわらかな鑿跡のテクスチャーと大理石を削り出した眼球の内省的なまなざしを持つ楠の半身像は、見る者に静謐な存在感と、現代人のメランコリックな心情を同時に感じさせ、日本のみならず世界の美術ファンにひろく知られています。また、アートシーンだけではなく、大江健三郎の連載小説『二百年の子供』の挿画や、天童荒太のベストセラー『永遠の仔』のカヴァー掲載、ドキュメンタリー映画『≒舟越桂』(藤井謙二郎監督)への出演など、ジャンルを越えて同時代の表現活動に影響を与え続けており、東北では2003年に東京都現代美術館を皮切りに全国を巡回した大規模な個展『舟越桂Works:1980-2003』が、彫刻家の郷里でもある盛岡市で開催され大きな反響を呼びました。
舟越氏自身が所蔵作品の中から作品を選出した本展『舟越桂|自分の顔に語る 他人の顔に聴く』では、最初期の傑作から、今年の夏に彫りあがったばかりの最新作を含む半身像11点の他、デッサン6点、ドローイング13点をご紹介します。身近な人々をモデルに、その存在や自己との距離感をたぐり寄せるように彫った『妻の肖像』(1979-80)など最初期の作品。『森ヘ行く日』(1984)や『冬の本』(1988)など、詩的なタイトルが物語性を感じさせ人気が高い80年代後半の作品。そして、大胆な「変貌」ぶりが話題となった『水に映る月蝕』(2003)から最新の『スフィンクス』の連作まで、彫刻家
舟越桂の現在進行中の創造の軌跡が展示されます。
- 会期=2007年10月12日[金]−11月9日[金] 10:00−18:00
- 会場=東北芸術工科大学7Fギャラリー
- 主催=東北芸術工科大学
- 協力=栃木県立美術館/西村画廊/田宮印刷株式会社/赤々舎/Apple Store Sendai Ichibancho
●関連イベント
- ○対談『自分の顔に語る。他人の顔に聴く。』
- 日本を代表する彫刻家である舟越桂氏と、近・現代彫刻史に造詣が深く、キュレイターとして第43回ベニス・ビエンナーレ(1988年)で舟越作品を世界に紹介した酒井忠康氏が、展覧会『舟越桂|自分の顔に語る 他人の顔に聴く』のオープニングを飾る特別対談をおこないます。酒井氏からの提案により、安部公房の小説『他人の顔』をテクストとして読みつつ、舟越作品の「表情」や「顔」に宿る不思議な魅力を、彫刻家との対話を通して探っていく試みとなります。
- 講師=舟越桂(彫刻家)×酒井忠康(世田谷美術館館長、本学大学院教授)
- 日時=10月12日[金]18:00−20:00
- 会場=東北芸術工科大学本館201講義室
- ○同時開催『栃木県立美術館所蔵彫刻コレクション展』
- 1972年に宇都宮市にオープンした栃木県立美術館は、国内はもとより、フランス、イギリス、ドイツ等西欧におけるコンテンポラリー・アートの動向を積極的に紹介している、日本を代表する公立の近現代美術館です。本展『TOCHIGI PREFECTURAL MUSEUM OF FINE ARTS: Sculpture collection|栃木県立美術館所蔵彫刻コレクション展』は、2007年現在、収蔵庫改修のために休館している同館のコレクション約8,000点のうちから、東北芸術工科大学文化財保存修復研究センター(藤原徹研究室)が一時保管・メンテナンスを依頼された彫刻作品の一部を公開・展示するもので、休館期間中の同館のプロジェクト『アートリンクとちぎ2007』の一環として開催いたします。
- 会期=2007年10月12日[金]−11月9日[金]
- 会場=東北芸術工科大学図書館2Fスタジオ144
- 協力=栃木県立美術館/東北芸術工科大学文化財保存修復研究センター 出品作家=アンディー・ゴールズワージー/デヴィッド・ナッシュ/ニアグ・ポール/戸谷成雄/深井隆
●学生の関わり
今回、約60名の学生たちが展覧会の管理・運営に携わります。仙台・福島・山形エリアから多くの来場が見込まれる本展では、学生たちはオープン前日に舟越桂氏による作品レクチャーを受講し、一般来場者向けのガイド役を務めていきます。作品の魅力や作者の意図を客観的に把握し、言葉でコミュニケートしていく経験を、それぞれの制作・研究活動にもフィードバックさせていくことがねらいです。
学生スタッフたちが舟越作品との日々を綴ったブログ:
http://gs.tuad.ac.jp/funakoshi/
●作家プロフィール
舟越桂 Katsura Funakoshi
1951年岩手県に生まれる。彫刻家。父は同じく彫刻家の舟越保武。1977年に東京芸術大学院彫刻科を修了。同年、函館トラピスト修道院のマリア像を、1979年に逗子カトリック教会のための木彫の聖母子像を制作する。1982年に初めての個展を開催して以降、一貫して楠を素材とし、大理石の眼を嵌め込んだ木彫の半身像を制作・発表し続けている。これまでヴェネツィア・
ビエンナーレ、サンパウロ・ビエンナーレ、ドクメンタIX、シドニー・ビエンナーレなど海外の主要な国際美術展に参加し、国内外で高い評価を得る日本を代表する芸術家である。1995年には第26回中原悌二郎賞優秀賞を、2003年には第33回中原悌二郎賞を受賞。
オフィシャルサイト:http://www.show-p.com/funakoshi/